第6章 春と新しい日々
「ってかさー、コンクールの作品どお?」
『んーまぁまぁかな。"希望"ってかのが本当ありきたり過ぎて、イメージがつかめない。』
「だよねーわたしも〜!」
グチグチとコンクールのテーマに文句を言っていると、
後ろから、聞き慣れた少し低めの男の声が響いた。
「ほら、そこ!ちゃんと集中して描け。私語も慎むように!」
振り向いたその先には眼鏡をかけた若い男の先生。
『「げっ!」』
「げっ!とはなんだ!一応これでも顧問なんだぞ?」
『「じょ、冗談ですよ〜ちょっとビックリしただけですよー
。」』
私達が口を揃えて言った相手は、美術部顧問の木下真琴先生。
24歳で、去年うちの学校に来た新人教師。他の先生から信頼されており、生徒からも人気のある。
美術系の大学に行きつつ教員免許も取り、他にも英検や簿記などいくつか資格を持つ結構凄い人なんだけど、若いせいか、親しみやすく先生と言うより先輩とかに近い気がする。
あだ名はまこっちゃん。
『っていうか、真琴"先生"、なんで私が主将なんですかー?』
はぁと、ため息をするまこっちゃんに言う。
「まだ、言ってるのか、いい加減諦めろ。あと、"先生"の所だけ強調するな、わざとらしくて余計傷つく。」
『もう、諦めてはいますけど、私じゃなくても、新にやらしても、良かったんじゃないですか〜?』
窓際で1人静かに描いているもう1人の主将候補の男子を指さして言った。
そしたら、
「俺、嫌っスよそういうの。なっても基本放置主義だから、部員まとめるとかしないし、主将、委員長会議も欠席しますから。」
と、この返答。
(っ、こいつ…!)
同じ学年で主将候補だった佐々木新は、見ての通り、クールというか無口で協調性がない。
部活に来ても誰とも話さずに黙々と絵を描き続けて、一見暗いように見える。
けど、才能はあって、私や由紀以上に賞を取っている、いわゆる美術部のエース。
噂だけど、密かにモテてるとか。
性格は気に食わないけど。