第6章 春と新しい日々
新学期の初日の朝、私は少し慌てていた。
貴大と一緒に登校する約束をしていたから。
鏡を見て、ある程度自分の服装や髪型をチェックして、玄関を出た。
家の前では既に貴大が待っていた。
『貴大、おはよ!』
「おはよ、夜海。」
ただ、そう言われただけなのに、
いつも、そう言われていたはずなのに、
何故が凄く嬉しい気分になった。
『ごめん、待った?!』
そんな、気持ちは置いといて、私がそう貴大に聞く。
「いや、今来たとこ。つーか何でそんな慌ててるんだよ。決めた時間より、早いだろ?」
『だ、だって貴大って待ち合わせするとそれよりも、早く来るじゃん…。待っていると思ったらバタバタしちゃって…。』
長年一緒にいた経験から私はつい貴大と待ち合わせしたら、約束の時間より早く出て、貴大を待たせちゃいけないと思うようになっていた。
「別に、俺が勝手に早く来てるんだから気にすんなよ…。
そんなんだから、寝癖付いたままなんだよ。」
『えっ!?ウソっ!!?』
貴大にそう言われて、私は自分の頭を触る。
さっき鏡を見た時はどこも跳ねてなかったのに…。
すると、貴大はニヤッと笑って私の頭を撫でた。
「嘘ー。付いてねーよ。」
『ちょ!からかわないでよー!』
「悪ぃ悪ぃ。」
『もー!』
バカにされたようで、少し腹が立ったけど、少し楽しくて、全然本気で怒る気にならなかった。