第2章 蒼き竜と虎の娘②~想い~
「…この間のBirthday,Thanks」
「あれは私がしたかっただけだから」
ふふ、と笑めば政宗も笑って。
それにしても驚いた、と呟いた。
今日は突然、飯に行かないかと誘われて。
この間の礼だとか言って、なんだか高そうなレストランに連れて来てもらった。
雰囲気もいいし、味もいいし…さすが、こういうセンスいいよなぁなんて、ぼんやり思っていると。
政宗がやけに真剣な瞳で、見つめてきた。
「…な、なに…?」
「…ゆき…俺も成人した…これから本格的に、組を背負っていくことになる」
わかっている。
彼が、伊達組の組長であることも。
父親を早くに亡くしてから、必死に大事な組を守ろうとしてきたことも。
「…そうだね…」
デザートのアイスを口に運んで、その冷たさに泣きそうになった。
彼は伊達の組長で、私は武田のひとり娘。
友好関係であるとはいえ、まだ世襲制が主な極道では、私達が結ばれることはない。
お互いこの想いを口にしたら、壊れる関係だとわかっていた。
けれどもう、口にしなくとも終わりを告げなければならないだろう。
「…だから俺も、けじめをつけたい」
そっと、目を閉じた。
口付けを交わしても、想いを交わすことはなかったこの中途半端な関係。
この辺が、潮時だろう。
「…俺は…」
ゆっくり目を開ければ、政宗の隻眼と視線が絡む。
「お前が欲しい」