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【戦国BASARA】極道パロ

第8章 若獅子と不良娘②”恋”




「っは!…ふん…っ!!」


朝、幸村が庭で稽古をしている声を聞きながら起きるのも、ずいぶん普通に思えてきた。

武田組の屋敷に居候しはじめて、早三ヶ月。
何度かここを出て行こうかとしたが、なんだかんだで幸村に諭されて、今だにやっかいになっている。
ここから学校やバイトに行って、ここへ帰ってきて。
幸村や佐助…屋敷のみんなが普通に、行ってらっしゃい、おかえりなさい、とそう言ってくれることになれてきてしまった。


「……いつまでも、いられるわけないのに…」


あたたかなこの場所は、ひどく居心地がよくて。
ただ純粋に向けてくれる、彼の笑顔や優しさが、ひどく嬉しくて。


「……そういう柄じゃ、ないんだけどなぁ…」


そう苦笑をこぼしつつ、てきぱきと布団を片して身支度を整えた。

日課になってきた朝ご飯作りの手伝いをしようと襖を開ければ、私に気づいた幸村が輝かんばかりの笑顔をくれる。


「おはようでござる!」

「おはよ。朝から元気だね」

「もちろんでござる!これもゆき殿のおかげでござる!」

「!…別に…」


本当に、柄じゃない。
昨日、会合とやらで帰りが遅いと聞いた幸村のために、夜食を作っておくなんて。


「…ありがとう、美味しかったでござるよ」

「!」


幸村の表情が輝かんばかりの笑顔から、やわらかな笑顔に変わったことに思わず頬が熱くなって、ふい、と顔をそらした。
反則だ。いつも無邪気な笑顔のくせに、時々こうした、優しい大人びた笑顔をする。
まるで愛おしむようなその視線が、誤った錯覚をおこしそうで、ひどく落ち着かない。


「…台所、手伝ってくる…っ」


まるで逃げるように背を向けた私の後ろから

「某は大盛りで頼むでござる~!」

なんてのんきな声が聞こえて、はぁ、と思わず肩を落とした。


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