第3章 蒼き竜と虎の娘③~恋い恋う~
『お前が欲しい』
政宗にそう告げられてから、私はずっと考えていた。
考えなくても、私がとらなきゃいけない道はわかりきっていたけれど。
それでも、政宗を想う気持ちが邪魔をして、踏ん切りをつけられないでいた。
「…政宗…」
ぼんやりと縁側で月を見上げる。
しんとした空気に、呟いた彼の名前が静かに響いて。
泣きたくなった。
政宗の声、唇、腕のあたたかさ、優しい隻眼の瞳。
あの日から、冷めやらぬ熱のように鮮明に体に残って。
離れては、くれない。
何も考えずに、彼の腕に飛び込めたらいいのに。
ふとそんな気持ちがよぎって、慌てて首を振ってその想いを消した。
「…お嬢、眠れないのでござるか…?」
突然、優しい声が響いて。
振り返った先には、幸村がいた。
いつも私をそばで支えてくれた、大切な人。
武田を捨てるということは、幸村や佐助を裏切るということになる。
「…ちょっと、ね…もう寝るよ」
にこりと微笑めば、逆に幸村は眉を下げて。
「…お嬢のそんな笑顔は、嫌いでござる」
そう呟くように言って、隣へ腰を下ろした。
「…幸村…?」
「お嬢は、政宗殿が好きでござるか」
真っ直ぐに見つめられて。
問うというよりも、確認をしたというような言い方に、思わず息をのんだ。