第10章 初デート
裕Side
「どうゆうことだ、それは。」
俺はそう静かに問いかけた。
「そうですね、僕が本部長に彼女を任せられないと思えば[略奪]するってことですかね。」
彼は少しだけ笑った気がした。
「僕は日向さんの元カレの弟なんです、兄からよく彼女の話は聞いてます。もしかしたら僕の方が彼女のことを知ってるかも知れないですね。」
新山は一方的にその情報だけを置いて帰っていってしまった。
そのときにふと思う。俺よりあいつの方がよほど彼女を知ってるんじゃないかと。
このままでは奪われてしまうと。
そう、自分よりも年下の人間に思わされてしまう自分に俺はどうしたらいいのかわからなくなった。
けれど、どうしても彼女の口からその真実を知りたくて。
俺は由架を少しだけ待つことにした。
するとそこまで時間もたたず、彼女は歩いてきた。
だから俺は由架に聞いた。
「新山から少しだけ話は聞いた、どうゆうことだ。」
その言葉には棘があるように自分でも思った。
思ったことをなんのオブラートにも包まず、ストレートに聞いてしまう。
俺の悪い癖だ。
そしてその言葉に彼女は俺のことをよく理解してくれているからか、優しく言った。
「冷静に話せる場所を設けたいの。ついてきてくれる?」
俺は無言で頷く。
由架はこうゆうところが年上らしい。
こんな年齢にもなって年上だの年下だの言うところが自分の子供っぽいところだってわかってる。
わかってるけど、どうしても気になる。
けれどそれに対して文句も言わず、優しく接してくれる彼女に俺は甘えていた。