第10章 初デート
裕Side
それからしばらく俺は廊下に呆然としてた。
彼女はこの事について自分で解決したいって言ってた。
この問題はデリケートな話だってのもわかってる、けどどこかで嫌だった。
多分、他の男と二人でいたのが気に食わなかったんだと思う。
すると話し声が聞こえた方向から足音が聞こえた。
その足音はだんだんとこちらへと近づいてくる。
「…本部長?お疲れ様です、退社したんじゃなかったんですか。今日定時でしたよね。」
あの声は新山のものだった。
「確かに定時で帰ったんだけどな…」
俺がそう言うとあいつは被せるように
「日向さんが心配で来たんですよね?」
と俺に言った。
そいつの表情はどこか、冷たくて、寂しそうな顔をしていた。
「…さぁ、どうだろうな。」
あいつのためを思い、俺は少しだけ誤魔化す。
「…本部長と部長が付き合ってるのくらいお見通しですよ。話も聞いてたんですよね?」
そう言われ、俺はそれを否定することができなかった。
「聞いてたのなら察せると思いますけど、僕はあなたから日向さんを奪うつもりはないんで安心してください。」
そう、冷静に改めてあいつの口からそう聞かされ驚く。
「本気、なのか?」
試しにそう聞いてみると新山は少しだけ俺のことを睨んだ気がした。
そのあと冷たい声で、
「ただ、彼女のことを傷つけたら許さないです。あなたと部長は王子様とお姫様、僕のことはまぁ、騎士とでも思ってくれればいいです。」
彼は多分、好きな人を[守りたい]と思える奴なんだろう。
それでも男は狼だ。
いつ何時、何があるかわからない。
「新山、お前は本当に彼女になにもしないのか?」
俺はそう問う。
すると新山の口からは
「わかんないです、僕は本能の赴くままに行動しているだけなので。」
と言う言葉が出た。