第10章 初デート
裕Side
仕事が終わり、俺は家に帰る。
帰ってキッチンに行って水を冷蔵庫から取りだし飲む。
肩書きが代わり数日。
最近は定時で帰れることが増えた。
というか正確に言えばそこまでする仕事がなかった。
定時前に仕事が終わり、部下の仕事を見てやるくらいには時間がある生活をしてた。
いつも残業だと俺に連絡を寄越す、由架からも連絡はなく、今日は普通に帰ってくるものだろう、そう思ってた。
けれど待てど暮らせど彼女は帰ってこない。
俺は心配になり、携帯に連絡を入れる。
けれど一向に反応する様子はなかった。
だが、それも予想はついた。
彼女は仕事中、携帯をマナーモードにするからだ。
けれどなにも連絡がないことが心配で、俺は会社へと足を向けた。
最悪、帰り道で会えば、どこかにご飯にでもいけばいい、そんなことを軽く思ってた。
けれど俺が会社につき、彼女のいると思われるフロアに行くと衝撃的な言葉が俺の耳に入った。
「部長が好きだから優しくしたかっただけですよ、特に意味はないです。」
その声は男の声で、そのあとすぐに由架がその男と会話していると言うことに気がついた。
そして彼女はその事実に対してあまり驚いていないようだった。
まるで前から知っていたかのように。
俺は廊下に立ち尽くす。
彼女が隠していたことがこの事だとすぐに気づいたからだ。
由架のことは信じているし、決して疑ってる訳じゃない。
けれど心のどこかであの声の聞こえる男の元に行ってしまうんじゃないかって不安になった。
俺なんかじゃ足りないんじゃないかって。
あいつを好きになって初めて[好き]という言葉がどれだけ重いものなのかを知った。
俺は好きと言う言葉の重さにビビって、その言葉を言うことが怖くなっていた。