第10章 初デート
そう言う彼の顔はどこか寂しそうで、けれど私はそれを笑顔にすることはできなくて…
とてももどかしい気持ちになった。
「だから、別に気にしなくていいです。部長からしたら重いですよね、こんなやつ。けどそれでもいいです。僕の存在を認めてくれたらそれで。」
彼の立場になってみれば、悲しい話だ。
だって、自分のことも最初は気づいてくれなかったのだから。
「ごめんね…」
私が謝ると新山くんは私に言う。
「僕は、あなたに謝ってほしくて手伝ってる訳じゃないです。」
そう言うと彼は仕事をちゃっちゃとまとめて、フロアを出ていってしまった。
このまっすぐな気持ちに私はまっすぐ向き合える自信がない。
けれど彼の気持ちに向き合ってあげることが彼から気持ちを向けられた人としてさめてもの責任だと私は思う。
私はどうしたらいいのだろうか。
それはまだわからない。
けれどしっかり向き合っていきたいと思った。
逃げても何も解決しないから。
私は私のやり方で彼の気持ちをしっかり受けとる必要があった。
私は彼がまとめた仕事を確認する。
何一つ間違いなく、きれいに纏められたその書類は素晴らしいものだった。
私もこの部を引っ張っていく人間としてがんばらなきゃいけない、そう感じさせられた。
私もその書類を纏めて片付ける。
そしてフロアの電気を消し、廊下へと出た。
するとそこには一人誰かがたっていた。
近づいて行くとその人は裕で。
「新山から少しだけ話は聞いた、どうゆうことだ。」
彼は不機嫌そうだった。