第8章 二人の昇進と二人の進歩
「今の俺の立ち位置になるつもりはないか?」
「え?」
唐突のことに驚いた。
まさか、部長だなんて聞いてない。
ましてや、今彼がしている仕事をしないかと言われているのだ。
かなり私は驚いた。
「あ、あの、課長とんで部長何ですか?」
思わずそう聞いてしまう。
だってそうじゃない。
私はただの平社員。
そんななにか取り柄もないこんな私に突然うちの部署の部長をしないかなんて驚く話だ。
「この話は俺が上に通した話じゃない。だから俺もなぜ由架が部長に指名されたのかはわからない。けど、断るかどうかはお前の自由だ。」
裕はそう言った後いつのまにか入れていたコーヒーを一口飲んだ。
「けど、それは俺が任せたどんな仕事も残業もやって遂げた頑張りが認められたんじゃないかって俺は思ってる。どう受けとるかはお前次第だ。」
私を見てそう裕は微笑む。
[あ、この人私のことすごくちゃんと見てたんだな]
[ただ、仕事任せてるだけじゃなかったんだ]
そんな感情が自分の中で溢れ出す。
それと共に自分の中ではこんな考えが生まれてしまった。
[私が部長になれば、私たちの関係は隠さなくていいのかな。]
だってそうじゃない。
私が昇進すれば必然的に裕は部長の座を離れることになる。
そしてあんな優秀な人材を簡単に会社は離さないだろう。
恐らく、また上の座へ昇進する。
なら一緒に仕事をすることもなくなるし公に言うわけではないが全力で隠す必要性もなくなる。
もしなくなるのであれば、昇進もでき、ひっかかりがひとつなくなる。
それなら一石二鳥ではないか。
だから私は恐る恐る聞いた。
「…私が昇進したら、付き合ってること隠さなくてもいいですか?」