第4章 私の好きだった人
「…?」
私の提案に部長は目を丸にしていた。
「どうかされました?」
「いや…。日向がいいなら泊まっていく。」
「はい。布団出しておきますね。」
私はそう言ってリビングを出た。
リビングを出てすぐにある収納スペース。
そこに客人用の布団をいれてあった。
元々は幸弥が来たときのためにおいてあったが、彼はうちに泊まるとき毎回一緒にベッドで寝ていた。
そのため、一度も使わずに終わった。
家の中の家具も同棲をはじめてから買おうといっていたので、だいたいは私が前住んでいた部屋からそのまま持ってきたもの。
[まだ、思いでの品が少なくてよかったな…]
そう思いながらも私は廊下に呆然と立ってた。
もう私は彼のことを好きじゃない。
そう幸弥に現実を突きつけられた時、なんとも言えない悲しさが私を襲った。
自分のことなのに気づけなかった。
それがすごくショックだった。
けど冷静に考えれば、彼の方がショックなはず。
さっきの私はいろんなことを突きつけられ相当なショックを受けていた。
けど彼はいろんなことを考えて、私のことを考えてしっかりとけじめをつけてくれたのかもしれない。
そう、数時間たって冷静になって考えることができた。
二人でいれば傷つけあってしまうから、彼は一人でそう決断してくれた。
彼は最後まで私のnightになってくれたのだろう。
彼はレディーファーストが良くできる、紳士のような人だった。
そんな彼だからこそできたことだと思う。
無くなってから気づく大切さ。
それに改めて気づかされる。
私がしばらくリビングに戻らなかったからだろうか、部長がリビングから出てきた。
「運ぶのそれか?」
そう聞かれ私はコクりと頷く。
すると部長は無言でそれをリビングへと運んでいった。
私は今まで気付かなかっただけで、不器用なのが空回りしているだけで、部長は心優しい人なのかもしれないなと再び思った。