第4章 私の好きだった人
裕Side
日向は先に眠り、俺は用意された布団でリビングの端に布団をひいて寝転がっていた。
[落ち着かない]
日向が泣いていて、俺は慌てて戻ってきて。
訳を聞いてなんとも言えない気持ちになった。
日向が泣いているという悲しさと、囚われていたものから日向が解放された喜びと。
いや、正確には囚われていたわけではないのだろう。
「私はもう本当に幸弥のことが好きじゃなくなったんですかね…」
そう泣きじゃくりながら問い掛けられて俺は頭を撫でてやる勇気さえもなかった。
本当なら、見ているだけ、聞いているだけが嫌だったはずなのに。
いざとなると俺は行動にうつせなかった。
自分の気持ちと日向の気持ちは逆方向だった。
多分、俺が一度帰ったときぶつかったやつが日向の言ってた幸弥ってやつだ。
幸弥というあの男は俺より器用そうで、俺にないものをすべて持っていそうだった。
さっきさらりと会ったときでさえもそう思ったが、日向から話を聞いて尚更そうなんだなと確信した。
なら、俺なら尚更望み薄だろう。
あの男で手が終えないような女の扱いを俺ができるわけがない。
日向のことはもう好きにならない方がいいのかもしれないとも思えてくる。
けど、そんなことはできない。
なのにも関わらず、身近に置けば逆に好きじゃなくなるんじゃないかと家を間借りするかと言ってしまった。
そして、あの返事にたいして[部屋が見つからないといいな]と思ってしまう。
今のところ日向を好きじゃなくなる兆しはない。
それどころかますます好きになりそうだった。
今までここまで人を好きになったことはなかったし、これは俺にとって初恋なのかもしれない。
初恋は実らない等というがそれもあながち間違いじゃないかもしれない。
俺はこの先どうなるのだろう。