第4章 私の好きだった人
「部長は私なんかに親切に世話やいてないで、前言ってた好きな人に世話やいてくださいよ。私みたいな人に部屋間借りさせても得しませんよ?」
考えに考えて私はそういった。
実際、その通りだろう。
こんなことをしている暇があるなら、その女に構ってやればいい。
私に構う必要などないのだ。
「別にいいだろ、なんでも。」
そう顔を赤らめてそむける部長はどことなく可愛く見えてしまった。
「じゃあ部屋が見つからなかったら、間借りさせてもらいたいです。」
この話を今蹴れば、万が一部屋が見つからなかった時家なしになってしまう。
さすがにお金がないわけでもないのに家なしは一社会人としてダメな気がした。
っと言うか、自分のプライドが許さなかった。
そして時刻はいつの間にか夜中の12時を指している。
こんな時間まで部長を付き合わせたことに罪悪感を感じた。
私は冷蔵庫にあるものを取りに行く。
そしてそれを部長に手渡した。
「よかったら、どうぞ。」
それは、外国の美味しいビールだった。
わざわざご飯まで作ってもらい、一度帰り道をたどっただろうに、戻ってきてもらい散々愚痴を聞かせたのだ。
せめてものお詫びとしてそれを出した。
「…ありがとう。」
部長はそう言って缶ビールを開ける。
するとそれを一口飲んだあと、部長は「あ…」と何かを思い出したように顔を青くした。
「どうかされたんですか?」
私は何かやらかしてしまったのかと思いソワソワしてしまう。
何か悪いことでもしてしまっただろうか、もしかして昨日自分のした仕事に何か不備があったのだろうか。
いろんなことが頭をよぎった。
「車で来たの忘れていた…」
「え?」
想像とは違う答えに私はビックリする。
「アルコールってどれくらいで抜けるんだったかな。」
頭を悩ませて考えている部長。
今夜は一人でいるのはなんだか寂しい気がした。
もうこの際一人じゃないなら誰でもいい気がした。
「家、よかったら泊まっていきます?」