第4章 私の好きだった人
部長が来るまでの時間は少しの間だったはずなのに長く感じた。
二時間も三時間も待っている気分になった。
どうしても支えがほしかった。
「由架!」
玄関からそう聞こえる。
[あれ、名前で呼んでる。]
こんなときでもそれが気になる。
鍵が開いていたからか、部長はすぐに中に入ってきた。
「何があった。」
部長は血相を変えてそういう。
「あのあとちょっと、元カレが来ていろいろはなしたんです。.......私、一人になるのが怖いです。」
私は床に座り込んでそういう。
すると、さっきまで私を見下ろしていたはずの部長の目線が同じになった。
「話してみろ。好きなだけ、話したいことを話せ。俺にできることならなんでもいえ。」
私はそのあと、さんざん部長にさっきあったことと元カレの愚痴だのなんだのをもらした。
けれどどれだけ愚痴を言ってもすっきりしない。
私が語りに語ったあとだろうか。部長は私にこういう。
「次の部屋は決まってるのか?」
「あ…決まってない…です。」
勢いで解約手続きを進めてもうはんことサインを書くまでしたが、このままいくと私は家なしだ。
「あ!でも最悪姉の部屋に転がりこめば!「新婚夫婦の新居に転がるつもりか?」…すみません。」
私が絞りに絞り出した案も今では使えない手。
今月中に引っ越しとなるとかなり厳しい話だった。
「…やっぱり考えて行動すべきでした。」
私はそう呟く。
「…俺の家、間借りするか?」
「え?」
突然の提案に驚く私。
「もちろん、嫌なら嫌で断ってくれて構わない。一部屋空いてるんだ。日向がいいなら貸してやるよ。」
正直、今の私にはこの話はとっても美味しい話だ。
けれど自宅に帰宅すれば部長がいるというのはいや、残業すれば一緒に帰宅するのが嫌だった。
正直、部長のことは今だに好きになれない。
横暴なのが前までは気に食わなかった。
けど今は何が?
でもなぜか好きになれない。
これはどう返事をすべきなのだろうか。