第3章 上司のしたかったこと
「どう、うちの妹は?」
席に座ってそうそう、莉架さんは俺にそう聞く。
「?」
これは日向をいわゆる恋人にどうだという意味なのか、仕事っぷりがどうだという意味なのか。
さっぱり検討がつかない。
「それはその、どうゆう意味ですか?」
俺はそういったあとに目をそらす。
「.....ふふふ。」
少し視線を上げれば莉架さんは笑っていた。
「...何がおかしいんですか...!」
精一杯の一言でそういう。
「私はあのこ、ちゃんと仕事できてるかなって意味で聞いたんどけどもしかして裕くんはあのこのこと好きなの?」
そう言われ、俺は咄嗟に
「違いますよ!誤解しないでください。」
と否定した。
すると莉架さんは微笑みながら言う。
「私はいいと思うよ。あのこ、彼氏にフラれただのなんだの言ってたし。事実上、あなたたちは同じ家系じゃないじゃない。姉と兄が結婚した。ただそれだけのこと。とりあいず、気持ちを伝えることが重要よ?ま、頑張ってね。」
と言って席を立ってしまう。
「何も食べないんですね。」
そう言う俺に莉架さんは
「ここには先方の指定で打ち合わせに来ただけだから。私には壮くんとお揃いのお弁当があるし。それじゃ~ね、うちの妹頼んだよ♪」
と言って去っていってしまう。
[日向とはあまり似ていないんだな]
そう内心思いながら俺は再び携帯に目線を戻した。
連絡が来る兆しは全然なくて、その度視線を大幅に下にやる。
俺はここまで自分のモチベーションを保てない人間だったのだろうか。
心のなかでひたすら仕事が進まない理由について考えた。
けれど結論はでない。
もう頭を抱えてしまいたいレベルだった。
「あっ、まだいた!」
背後からさっき聞いたような声がしてまた振り向くと莉架さんがいた。
「どうかされたんですか?」
「いやー、大したことじゃないんだけどこれ由架に渡しておいて。それじゃ!」
と何かが入った袋を俺に渡して小走りで行ってしまう。
渡しに行けば会う口実ができる。
そう思うと心のどこかで嬉しかった。