第3章 上司のしたかったこと
日向にメールを送信して三時間がたった。
いまだに返信がない。
寝ているのだろうか。
そして俺はあいかわらず仕事がつまっていた。
すると書類をまとめて持ってきた部下に
「部長?いつもならもうとっくに終わってるのに。どうかしたんですか?」
と問いかけられてしまう。
「特にはそんなにない。」
そう言いながらも内心はすごくきにしていた。
それにそんなことを気にして仕事が手につかないなんて口が裂けても言えないことだ。
俺は必死に仕事を終わらせた。
やがて昼休みになり、いつもなら軽食をデスクでとりながら仕事を続けるのだが、部下たちに「部長はしっかり休んでください!」といわれ、強引にエレベーターに乗せられてしまう。
そう言われたことに心当たりはあるし、心当たりがあるのにどうも出来ない自分がどうしようもなく情けない。
携帯がなる度、そわそわしながら画面をみるが日向からの連絡はない。
ここまで携帯が鳴るのを待っているのは初めてだ。
会社を出てその辺のカフェに入る。
オレンジジュースとパンケーキを頼む。
俺は柄にもなく、甘いものが好きだ。
差し入れなどでコーヒーをもらうことが多いがそこまでコーヒーは好きじゃない。
頼んだとき店員も少し驚いていたが、驚くのもわからなくはない。
その間もずっと携帯を気にしていた。
しばらくしてだろうか。
「裕くん、甘いもの好きなんだね~。」
後ろから声がした。
「莉架さん?」
「正解。」
後ろには兄さんの婚約者で日向の姉の莉架さんがいた。
「職場、この辺なんですか?」
俺はいつも仕事の休み時間に会社を出ることはなかった。
会わなかっただけで、職場は近くだったのかもしれない。
「まさか...それならかわいい妹もかわいい義弟も毎日のように見れるかもしれないけど、今日はたまたまこの辺仕事で来ただけだよ。」
そう言って莉架さんは俺の目の前に座った。