第3章 上司のしたかったこと
いまいち、仕事に集中できずにいる。
いつも疲れたときに前を見れば頑張っている日向がいるはずなのに今日はいない。
前までいないことがあたり前だったはずなのに。
日向のことが好き過ぎた自分が気持ち悪く思えてくる。
恋愛と言うものはここまで人を狂わせるのだろうか。
学生時代、彼女がどうこういいデレデレとしていたやつらを見て「何をしてんだ」と思っていたが今は人のことを言えない。
そして嫌なことにその気持ちがわかってしまう自分がいる。
自分はあんな人間にはならないだろうなと思っていたはずなのにだ。
ましてや、仕事にまで支障が出るなどもっての他だ。
自分で自分のことが恥ずかしくなる。
けれどそれも日向のことが好きになった自分に責任がある。
[仕事に私情を持ち込むな。]
これは俺が部下に何度も言ってきた言葉だ。
それを俺がやってしまってどうする。
上司として失格だ。
最近時々思うことがある。
こんなやつが上司でいいのだろうかと。
他の部署よりも一回り以上年が若い。
その分努力して仕事をしてきたつもりだが、それでも長年のキャリアがある他の部署の部長には負ける。
今でこそなくなったが、なったばかりの頃は「こんな若いやつにできるのか」と何度も言われた。
このままでいればまたそういわれる日も近くはない。
よく、女が仕事と私どっちが好きなのと聞いているのを耳にしたりするが俺なら仕事を選ぶと思っていた。
けれど今の俺は選べない、あるいは仕事を[捨てる]と思う。
けれど相手の気持ちが俺にないのなら、俺は仕事を捨てても意味がない。
こうゆうとき、恋愛になれている人間ならどうするのだろうか。
俺にはわからない。
とりあいず、日向と会いたかった。
顔だけでも見たかった。
仕事に集中するためにも、自分のためにも。
そう思った俺はいつの間にか日向にメールを送信していた。