第15章 兄姉夫婦の知らなかった隠し事。
裕Side
「オレンジジュース1つ、兄さんは?」
「烏龍茶1つお願いします。」
俺たちはとある居酒屋を訪れた。
喫茶店とかでもいいのかなとは思ったが、少しだけ気楽さが欲しかった。
話す内容が少し重いから。
少しでもどこかで軽くしたかった。
「…どうして僕を待ち伏せしたの、裕。」
そう兄は俺に聞く。
「………その理由、わかってるんじゃないのか。」
そう俺が言うと兄は少し気まずそうに下を向いた。
兄が俺を拒絶したいのか、あるいは俺に拒絶されると思っているのかわからない。
けれど態度的にどちらかだということはすぐにわかった。
先が気になる。
だけど知ることが怖い。
それを頭のなかで繰り返す。
やがて飲み物が運ばれてきて、目の前に並べられた。
けれどそれからしばらくしても話すことができずにいる。
そう、びびってる。
由架とのときも知るのが怖かった。
あのときと状況は変わらない。
でも、それでも、俺はこの状況をこのままにはできない。
それがわかってても、踏み出す勇気がなかなかでない。
でもそんなとき、とある人の顔が頭に浮かんだ。
由架だ。
そしてそれと同時に思い出す、彼女が背中を押してくれたことを。
それを思い出したとき、決意を再び決めた。
このままうだうだしてられない。
俺たちは変わらないといけない。
俺は言わなかったことを、隠していたことを謝らなければならない。
そして俺の口から、「俺は、どんなことがあっても兄弟だと思ってる」って伝えなきゃいけない。
俺はいろんな思いを込めて口を開いた。