第2章 上司の理解不能の言動
外回りも終わり、私達は会社へ戻ろうとしていた。
再び、部長の運転する車に揺られ私はぼーっとしていた。
その横で部長は何の疲れも見せず、車を運転している。
昨日の夜、仕事が終わらないと言っていたのが嘘のようだ。
会社の休憩室のソファーで仮眠を少しだけとって、そのままいつもの時間から仕事を始めたのだろう。
ここまでの仕事人間もなかなかいない。
絶対彼女とかいないんだろうなと思い、私は興味本位で
「部長って彼女いるんですか?」
と聞いてみる。
「彼女はいないが、好きな人くらいはいる。」
部長は少し顔を赤くして言った。
彼女がいないという情報と共に、聞いてもいない好きな人の有無までもを何故か教えてくれた。
「そうなんですね~」
私がそう聞き流すと私の傷口に塩を塗るように
「日向...じゃなくて由架はそうゆうのいるのか?」
ん?今、名前で呼び直した?
私は少し、違和感を感じたため部長に聞いた。
「今、名前で呼びました?」
思わず私がそう聞くと部長は
「何かおかしかったか?」
とそわそわして言う。
「いえ...そうですね、彼氏は居ましたけど残業のしすぎでフラれました。」
質問の答を私が述べると、部長は少し嬉しそうな顔をした気がした。
少し苛立ちを覚えたが、私も苛立ちをダイレクトに行動に移すような子供ではない。
見て見ぬ振りをしよう。
そう思い私は顔を窓の外へと向けた。
「新しい男とか作らないのか?」
そう、少し声のトーンを落として言う部長に対して私は
「そうですね~、また恋人とか作りたいですけどそんな出会いないと思います。」
といった。
実際、今の職場は出会いがある職場でもないし、周りは恋人がいる人ばかりで既婚者なんかもいる。
そんな環境で手短に恋人探しなどはできない。
「けど、運命の出会いとかは信じてみたいです。」