第14章 家族会議
翌日から、またあの問題がなかったかのように仕事をする毎日が始まる。
こういう日に限って仕事が暇で、ついつい考える時間ができてしまう。
こういうときこそ、忙しかったらいいのに。
そんな願望は叶わない。
ある程度のやることはあるけど、急ぎの仕事もなければ、定時で帰れるくらい余裕があった。
部下は「今日は定時で普通に帰れそうですね!」と嬉しそうに声をかけるがそれにたいして「そうね。」と静かに答えることしかできなかった。
[久しぶりにバーに行こう。]
私は鞄を持って定時退社した。
コツコツと靴を鳴らしながら歩く。
最近は裕の車で帰ることが多かったり、誰かとたまたま帰りが一緒になることが多くて自分の足音を聞くことなんてあまりなかった。
その音が寂しく感じる。
私はその音から逃げるようにバーへと入っていく。
私が入るとバーテンは「いらっしゃいませ」といって私を迎いいれる。
カウンターへと腰かけると注文を聞かれ、私は「…現実逃避できそうなお酒、お願いします。」と意味のわからないリクエストをしてしまった。
そのリクエストにバーテンは文句を言うことなく「かしこまりました。」と言ってお酒を作り始めた。
別れるか、親の反対を押しきるか、私たちはかなり、大きな分岐点に立たされている。
彼の頭の中には別れるなんて選択肢多分見えてなくて、もし、その答えが正解なら私しか導くことはできないと思う。
だから、すごく悩む。
別れた方が彼のためになる。
彼は多分家族の籍を抜けたくないから。
でも、母は私が姉の妹で裕が壮さんの弟であるかぎり一緒にいることは許してくれない。
私は今、どんな決断をするべきなのだろう。