第14章 家族会議
「お前が養子だったことを、壮はまだ知らないんだ。」
「え?」
今まで知らなかった事実を俺は知らなかった。
「じゃあ、兄さんは俺のことを血縁関係のある家族だと思ってるってことか?」
「あぁ、そうなる。だからお前が籍を抜けるにしろ、抜けないにしろ、その話がでた以上、あいつにも話をしないといけない。」
そう言われ少しだけ心が痛んだ。
兄は今まで、俺のことを[血縁関係のある兄弟]として見てくれていたはずだ。
でも、それに対して俺は[血縁関係はない兄弟]として見ていた。
もちろん、家族じゃないって思ったことがある訳じゃない。
あの事実を知ったあとでも家族だって思ってる。
けれど、それでも兄は一部の詳細を知らなかったわけだ。
しかも家の中でたった一人だけ。
その事実を知ったら兄はどう思うだろう?
考え込んでいるとそれを見ていた父が、俺の感情を悟るかのように
「お前が責任を感じるようなことじゃない。知らせなかったのは親だ。それに裕、きっとこの事を知っても壮は変わらず接してくれるはずだよ。」
と俺に言った。
いつも父や、母、兄に優しく接してもらうと俺は[この家の養子にとられてよかった]と思う。
父はいつも仕事で遊んだ記憶はあまりないが、遊んでくれたときはいつも俺の知らないことをたくさん教えてくれた。
母はいつも俺の様子をしっかり見てあまり感情が表に出たりしない俺のちょっとした違いに気付き、話を聞いてくれたり、サポートしてくれたりした。
そして兄には一番お世話になった。
俺が何かに困っているといつも手助けしてくれて、勉強を教えてもらったり、親には相談しにくい相談に乗ってくれたり。
だから、この家の籍から抜けることが嫌だなと思う自分もいた。