第14章 家族会議
裕Side
俺は久しぶりに実家を訪れていた。
といっても由架のことを話に来たわけではない。
ただ単に帰ってきただけだ。
あの事が発覚してからそんなに時間もたっていないはずなのに、両親はその事に対しては嫌な感じに触れてくることはなく、むしろ好意的にいろんなことを聞いてきていた。
きっと今ごろ、由架はご両親を説得しているのだろう。
一番最初は俺も行くと行ったのだが、莉架さんに「お母さんのことだし、逆効果」と言われ、代わりについていってくれると言ってくれたので俺はおとなしく待っていることにした。
で、今まで仕事でほぼ家にいなかった俺は自宅に暇潰しできるようなものもそんなになく。
フラフラと実家に帰ってきたと言うわけだ。
実家の猫をボーッとしながら撫でていると、父が不意に言った。
「由架さんのご両親にはちゃんと言えたのか?付き合ってることは。」
その言葉にはどこか重みを感じた。
そしてそれを聞いたとき、あの事について話すのは今だと思った。
けれど、母は「ちょっと買い物に行ってくる。」と言って家を後にしてしまう。
ひとつタイミングを逃したな。
内心そう思っていると父は俺に言った。
「何か話そうとしてたみたいだな。少し話してみろ。」
俺はその言葉に少しだけあとを押され、とりあいず父に話してみることにした。
「…向こうのお母さんが俺が兄さんの弟ってことよく思ってないみたいなんだよ。」
そう俺が言うと父はうんうんと頷く。
「…だからどうにもならかったらだけど。氷山の家の籍を抜けようと思ってる。」
そう言うと父は予想通りなにもいわなかった。
けれど父はそのあと気になる発言をした。
「その事についてもうひとつだけ言わなきゃいけないことがあるんだが、いいか?」