第13章 説得と決意
あれから数週間。
私は以前と変わりない生活を送っていた。
自分の仕事にもなれ、調子は絶好調。
褒められることもかなり増えた。
けれど、私の中には一つ悩みがあった。
[自分の両親に裕のことどころか彼氏が変わったことさえも言っていないことだ。]
別にいうタイミングがなかったわけではない。
けれど長年、付き合っていた彼と別れてしまったこと、そして新しく付き合った人が姉の配偶者の弟であること、職場の上司であること。
すべてが重なった結果言いにくくなってしまった。
もちろん、姉たちは今の私たちの関係は知ってる。
だから何度か相談してみようかとも思った。
けれど私もいつまでたっても姉を頼りにしているわけにはいかない。
だからあえて相談はせずにいた。
何度か実家に電話しようと携帯を手に取ったこともあった。
けれど電話をかけることは私にはできなくて。
それを会社での休み時間、ずっと繰り返していた。
それを繰り返して何日がたっただろうか。
ある日、父から電話がかかってきた。
父は昔から優しく、いつも母に怒られると父の元にかけよっていた。
母は悪い人ではないのだが、少し口うるさいタイプの人間で、父はその真逆だった。
「もしもし、お父さん?」
「あぁ、由架元気にしてたか?」
昔は毎日のように聞いていた父の優しい声だった。
「うん、元気にしてるよ、お父さんとお母さんは?」
「あぁ、元気にしてる。」
そんな他愛もない会話をしていたとき、不意に不思議に思った。
父はなんのために電話をしてきたのだろう?
「ところで今日はどうしたの?」
私はそう問いかける。
「あぁ、今日は少しお前のことで話したいことがあってな。仕事が終わったら少し会えるか?」
そういわれ、再び不思議に思ったが私はそれを承諾し、電話を切った。