第13章 説得と決意
あの発言をきっかけに、空気が凍る。
「裕、あなた何をいっているかわかってる?」
素の空気のなか口を一番最初に開いたのは裕のお母さんだった。
「あぁ、わかってるつもりだ。俺も生半可な気持ちでこんなこと言ってるんじゃないよ。」
それに対して真剣に説明する裕には誠意が感じられた。
私は何も言えずその場に居るだけだった。
その間、いつもそこまで荒っぽくならない裕と裕のお母さんがただひたすら言い争っていた。
この状況をみて思う。
付き合い始めたときの私はこんなことになったとき何か対策を考えていただろうか?
ただ自分の気持ちだけで行動に起こしていたのではないか?
それなら無責任な話だ。
きっと裕はその事も考えていたに違いない。
私はそう、自分の中で自問自答を繰り返していた。
すると、裕のお父さんに話しかけられ私はハッとする。
「由架さん。あなたはどう考えているんだい?」
けれど私はそう言われても答えられるほどの答えを持っていなかった。
考えながらも答えられずにいると、
「わかんないよね。僕もそう思うよ。お前たちは別の場で出会っていたのに、たまたま兄と姉が結婚した。単純に言えば悲劇とも言える。」
といわれた。
「けれど悲劇だろうが、好きなものは好きだろう。だからお前たちなりにやってみればいいんじゃないかと僕は思うよ。それですぐ別れるようならまあその程度だったってことだ。僕たちからそれ以上、言うことはないよ。」
裕のお父さんがそう言った時、その言い争いは止まった。