第12章 上司と部下の張り合い
「今日は新山くんにたくさん助けられちゃったね、ありがとう。」
私はそう彼にお礼をのべた。
「いいですよ、それに体調悪そうってのは本当です。」
「え?」
突然言われたことに驚く。
「女の人って、恋すると綺麗になるんですよ。好きな人といれば肌は綺麗になるし、目も輝く。信じない人は信じないかもしれないけど、僕はそう信じてるんです。」
そう少し遠くを見つめていった。
「日向さんは今その好きな人と会いたかったんじゃないですか?」
そう言われて少し驚いた。
「自分の好きな人が好きな人に会いたいというなら会わせてあげたいじゃないですか。僕もそこまで身勝手な男ではないので。」
そう言う彼の目は少し寂しい目をしていた。
駅には近かったのであっという間についてた。
「僕が見ていたのは、いつも、恋をしていた日向さんでした。多分、僕が好きだったのは恋をして綺麗になった日向さんだったんだと思います。」
そんなことを言うがその言葉にはなぜか、重みと少しの偽りが感じられた。
[幸弥の時と一緒だ。]
わたしと脳内に思い浮かんだ。
さすが兄弟だなと思ったと共に、自己犠牲にしているんだということに気づいた。
「嘘、だよね?」
そのあと少しうつむいた新山くんの頭にいつもなら背が高くて手が届かないのに、手が届く。
私はそんな彼の頭を撫でた。
「…何でわかっちゃうんですか。気づかないでくださいよ…カッコ悪いじゃないですか。」
そう言う彼に私は
「私の部下だからね。それくらいわからないと。」
と言う。
「あはは、部長には敵わないな。」
その言葉には少し空元気が混じっていて。
「フラれるなら素直に好きって言ってフラれた方がかっこいいよ?」
と私は言う。
「そうですね。兄みたいになりたくないですからね、自己犠牲になるのは嫌です。」
そう言った後少しだけ間が出来て
「ずっと好きでした。僕のことを好きになってください。」
といわれた。