第12章 上司と部下の張り合い
「部長~、彼女とかいますぅ~?」
私は今、自分の部の部下たちと飲んでいる。
そして、中の数名が悪酔いしている。
飲みにいくという話になったのも仕事が終わったあとの話。
最近、仕事づめだったうちのフロアはみんな疲れを出していた。
大抵の人は疲れはてて終っても飲みに行けない。
そんな生活を送っていたからか、うちの後輩たちにも疲れが出てきたようだった。
それで、悪絡みされてるといったところ。
さっき、裕からメールも来ていて、多分、彼的には帰ってきてほしいとかそう言うことを彼なりに遠巻きにいってるつもりだろう。
けれど、もう店に入ったあとで到底帰れる雰囲気でもなかった。
「いなかったらどうするつもり?」
私はその部下をあしらう。
正直、自分の部下ながらみっともないなとも思える。
「その時は部長と付き合います!」
「丁重にお断りします。」
その下りにまわりには笑いが巻き起こった。
[早く帰りたいな。]
私はそう思いながらも口に出せずにいた。
そこから二時間ほどのみ、私たちは店を出る。
そして、そのまま帰ろうとした。
すると、
「部長~、二件目いきましょうよ~。」
とさっきの部下が私を二件目へと誘った。
「もうそろそろ家でやることがあるから二件目はいいや。」
そう断るが、
「えー。いきましょーよー。」
と私の手首を掴んだ。
もういくしかないのかな~、今日は日付変わる前に家に帰れないのかな。
そう思っていると一緒にいた新山くんが
「日向部長、少し体調悪そうですよね?早く帰った方がいいですよ。」
と言ってその部下の手をはらう。
「じゃあオレ送っていきます!」
という誘いを新山くんは
「いーよ。僕が送っていくから。お前らはそのまま飲んでこいよ。」
と言って私の手を軽くつかんで帰り道の方向へと引いていった。
後ろからは「新山もあとで来いよ~。」という声が聞こえた。