第12章 上司と部下の張り合い
裕Side
外は曇り始め、日差しが窓から入らなくなる。
けれど、俺はそんなことも気にせず仕事をしていた。
ある程度の山が終わるとデスクを離れ、他の部下に指示を出す。
それを繰り返していた。
それを言われたのは何往復目だっただろう。
「日向部長ってどこに行ったんでしょうか?」
それを言われたときはっとした。
もう帰って来ていておかしくない時間なのにフロアにいない。
他の部下に聞いても、見ていないの一言。
俺は慌てて携帯を見た。
するとそこには不在着信と、メールが入っていた。
「帰る方法が見つからなくって歩いてる。一番近い駅目指して歩いてるからちょっと遅くなります。」
そのメールをみて安心していると後ろから新山が現れた。
「日向さん、戻ってこないんですか?」
「あぁ、交通手段がなくて歩いてるらしい。先方の回りが工業地帯でな。」
俺がそう答えると、新山は、
「けど、日向さんいないとうちの部署回らないんですよね。営業車借りて向かいにいってもいいですか?すぐ戻るんで。」
と言って俺に無理矢理雰囲気で頷かせ、行ってしまう。
そのあとあいつに言われたことを思い出して止めようかと思ったが遅かった。
「本部長!次、お願いします。」
そう声をかけられ、俺は慌てて仕事に戻った。
自分が仕事に私情を持ち込むようになると思っていなかった。
けれど、それをわかっていても、好きって言いたい。
離したくない。
そう思える相手も始めてで俺は少し混乱を覚えた。