第10章 初デート
私がその場所につくと、幸弥は窓際の席に座っていた。
私がゆっくりとそちらへ足を向けると途中で気づいたのか、軽く手を降る。
私が向かいの席に座ると無言と時が流れる。
お互い、何を話したらいいかわからないからだ。
私は「今日は、その、突然いったのに来てくれてありがとう。」と声をかける。
「あぁ、俺も暇だったから別にいいよ。最近彼とはどう?」
そう聞かれ私は戸惑う。
「あ、ごめん。少しがっつきすぎたよね。最後にあったとき、実は男の人すれ違ったんだけどその人、由架の部屋、向かっていったからさ…」
彼は少し下を向いて言う。
「…あ、うん、今は一緒に住んでる…私が勢いで部屋解約しちゃったから流れで転がり込んでるみたいな感じなんだけど…」
それにたいして私も言いにくいことだからか、無意識に下を向いて話していた。
「あの…さ、君は…俺のことをたくさん大切にしてくれた。最後は自分の気持ちにも気づかないで、俺を選ぼうとしてくれたよね。だから、今日は、君をフるためにじゃなくてこれまでのありがとうと、さよならをいいに来たんだ…」
私はその言葉を聞いて驚いた。
表面的に見て、私にどんな理由があろうとも、私は彼のことを裏切ったのではないかと。
それなら私は罵声を浴びせられる覚悟ぐらいしていたつもりだった。
けれど感謝の気持ちを言われてしまって驚きを隠せない。
「…驚く、よね?俺も少し驚いてる。けどね、俺はまだ君のことが好きだし、とても嫌いだとかそんなことを嘘でも言えないんだよ。」
そういって彼は無理矢理笑った。
「無理に笑わないでよ…」
私がそう言うと彼は、
「君の最後の俺の記憶を悲しい顔にしたくないからね…」
といってひきつった笑顔をやめることはなかった。