第10章 初デート
いつも通り、仕事を終えて私は指定された場所へと向かう。
幸弥の行きつけのカフェだ。
彼は私と付き合う前からコーヒーが大好きで数々のカフェを巡っていた。
そのなかでもお気に入りだったのが今日いくお店だ。
私もよくつれていかれたので覚えている。
彼ともいろんな思い出があったな、そう思いながら私はその場所へと向かう。
彼は私が時々わがままなことをいっても持ち前の包容力で、私の相手をしてくれた。
私は多分、お世話されたりするのが好きなんだと思う。
だから年上が好みなのだろう。
けれど、あの頃の私はずっと幸弥に頼りっぱなしで、何か困ったことがあっても彼が何とかしてくれるだろうと甘えていた。
そしてその行いの罰なのか、彼とは別れることになってしまった。
理由はそれだけじゃないと思う。
そんなことはわかっているつもりだ。
私たちは一緒になる運命ではなかった、ただそれだけのこと。
けれどあの頃の自分は幸弥と結婚するのだと思っていた。
だから今の私を見ればかなり驚くことだろう。
大嫌いだった上司にぞっこんで、何よりも大事にしてもらって。
けれど、私は今、その幸せを壊しかけている。
過去の、自分の気持ちによって。
その壊される原因を今から壊すのだ。
これは私による、私のためだけの、戦いなのだ。
自分が今一番求める人への気持ちをぶつけるために、私は過去の気持ちを切り捨てたい。
私はその気持ちを胸に、その場所へと向かう。
これまでのありがとうとこれからも私たちの未来への切符をもって。