第10章 初デート
裕Side
自宅につく頃にはとっくに日付が変わっていた。
兄さんと久しぶりに話せたのが嬉しくて、つい長居してしまったようだ。
「ただいま…」
俺はそう呟いて家のなかに入るがその言葉にたいして返答はない。
俺がリビングに入れば、そこには片手に携帯、片手に缶のビールを握ってソファに埋まるように寝ている由架の姿が目に入った。
寝ている由架を見ていると時々思ってしまうことがある。
[誰にも見せたくない、俺だけを見てほしい]と。
そんなことを思ったところでそうできるわけじゃないとはわかってる。
ものわかりの悪い年齢の子供ではないのだから。
それに束縛したいって訳でもない。
それなのになぜかそう思ってしまう。
彼女は俺が重いかときいたとき、否定してくれたが、こんなことを言えば次は本当に嫌われるのではないかと、拒絶されるのではないかと不安になる。
果たしてそれは俺にとって得策と言えるのだろうか。
昨日は「そんなやつとは出掛けたくなんかない」とかかっこをつけたことをいったがそんなことはない。
それはただ単に心の広いやつと思われたかっただけで、本当は[彼女が誰のことを好きだったとしても二人で出掛けたい]っというのが本音だ。
俺は俺自身のことを好きな由架じゃなく、由架そのものを好きになったのだから。
他のやつに取られたとしても取り返しに行ってしまうだろう。
さすがに自分のことで苦しむ彼女はみたくはないが、彼女のために自分が苦労するのは苦じゃない…。
でも、それでも、自分がどうしたいのか、何がしたいのかが少しわからなくなっていた。