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Diable Patron

第10章 初デート


一人で帰宅してリビングのソファでぼーっとする。




彼は何か用事があるような様子でバーを出てすぐに会社の方へと歩いていった。



多分、車を取りに行ったんだと思う。




そして私は会社とは逆の方向の駅へと歩いた。




一人で電車に揺られて。




いつもの駅で降りて何となく、帰り道にあるコンビニによった。




お酒を買って、おつまみを買って。




晩御飯もそういえば食べていなかったなとカップラーメンを買った。




そしてコンビニの袋を下げて家へと帰る。




独り暮らし始めたての頃はこんな感じの生活をしてたなと不意に思い出した。





別に誰かがご飯を作ってくれるとか、今日は自分が作るとか、誰かと一緒に食べるとか。




そんなことは一切なくてただ一人で今日はなに味のカップラーメンにしようかなとか、久しぶりに期間限定の味のお酒にしようかなとか。



そんなことしか考えてなかったなって。




家での楽しみなんてそこまでなかった。




私が今まで仕事中、早く帰りたいって思ってたのは家に帰りたいって意味じゃなくて家に帰るまでの寄り道が楽しかったんだろう。




当たり前が当たり前じゃなくなったとき、それまでの当たり前がどんな意味を持っていたのかを初めて、客観的に見ることができる。




そう、一つ学んだ気がした。




別にその一つを学んだところでなんとかなるなんてことじゃない。




別に得することもない。




ただひとつ、これからの当たり前を大切にできる。




ただそれだけのこと。




それだけのことだけど自分には重要に思えた。




[帰ったらすぐに幸弥に連絡しよう]





私はそう思いながら前を向いて歩き始めた。
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