第16章 捕虜
もう1度部屋に入り直すとヒュースが話し掛けてきた。
ヒュ「貴様は、金の雛鳥の片方...」
僕「雛鳥...?」
迅「雛鳥って言うのはターゲットって意味みたいだよ」
僕「あぁ、そういう事。えっと、ヒュースでいいかな?僕は藤咲明希。よろしく」
ヒュ「馴れ合うつもりは無い」
陽「そう言うな。明希ちゃんのつくるおかしはぜっぴんだぞ」
そっぽを向いたヒュースに陽太郎が肩をポンッと叩く。ヒュースと陽太郎はそれなりに打ち解けているみたいだ。
陽「それよりも、明希ちゃんおかえり!もうちょうしはいいのか?」
僕を気遣いながらも抱っこをせがむ陽太郎。普段は偉そうにしてるけど、こういう所は可愛いなと思いながら抱っこする。
僕「ただいま。来週から防衛任務にも就けるくらいには戻ったよ」
陽「ほんとうか!」
僕「うん。あ、そうだ。陽太郎と雷神丸にバレンタインチョコ持って来たよ。おやつにどうぞ」
陽「おぉ!ヒュースといっしょに食べてもいいか?」
僕「勿論」
マカロンを渡すとヒュースの元に行き、一緒に食べ始めた。
最初は「何だコレは」と言って怪しんでいたヒュースも、食べると顔が綻んだ。
僕「仏頂面だけじゃなくてあんな顔も出来るんだ」
迅「明希のお菓子のおかげだな」
僕「そうだったら嬉しいな」
2人の微笑ましい姿を見ていると、ヒュースが再び話し掛けて来る。
ヒュ「この『まかろん』というのは貴様が作ったのか?」
僕「うん、そうだけど...」
ヒュ「...美味いな」
僕「ほんと?口に合ってよかった」
ヒュ「他にも作れるのか?」
僕「一応何種類かは作れるよ」
ヒュ「そうか」
それっきりヒュースは黙り込んでしまった。何か気になる事でもあったのだろうか?
迅「明希、そろそろ戻ろう」
僕「あ、うん。じゃあ、またね2人共。雷神丸も」
そう言ってヒュースの部屋を後にした。
♢♢
ヒュースsaid
金の雛鳥の片方...アキと言ったか?に貰ったまかろんを食べた時、何処か懐かしい味がした。食べた事無い筈なのに何故だ...?
本国にはまかろんなんて物無かった。では何故…?
アキ達が退出してからヨータローに心配された。
陽「ヒュース?どうした?」
ヒュ「...いや、何でも無い」
気にしても仕方ない。それよりも、今は本国へ帰る手立てを考えなくては…。
*蓮流(はる)って読みます
