第8章 明日の夜も、会いましょう【忍足 謙也】
今は、夜の10時。
近所の神社に合格を祈願しに、謙也くんと待ち合わせをした。
試験前日なんだから早く寝なさい、と言った私に、先輩が行かなくても一人で行くんで、どーせなら先輩と一緒がええって言ってくれたことが嬉しくて、先輩らしく断るなんてできなかった。
石段を登り、こういう時だけ都合よく500円と賽銭を奮発し、神様に、絶対合格できますように、と念押しをする。
神様に念を送り終わり顔を上げると、にこやかに笑う彼の顔があった。
「なんや先輩、何をそんなに必死に願ってたん?」
「そ、そりゃ謙也くんの合格に決まってるやん」
「ふーん」
うそ。
ちょっとだけ、最後にほんのちょっとだけ告白がうまく行きますように、ともお願いした。
「あーあ。用が済んでもうた。
せやけど、やっぱこんな時間じゃ御守りも買えへんしなー」
「あ、それやったら…
謙也くん」
「はい?」
謙也くんの前に差し出したのは、御守り。
数日前、合格祈願の御守りを別の神社で買っておいたのだ。
手作りの御守りを作ろうかとも思ったが、私の不器用さじゃ、御守りどころかなにも入れられない布っ切れになってしまうので諦めた。
「え!ええの?おおきに!」
「うん」
彼の笑顔は本当に眩しい。
けれど、少し胸が締め付けられる。