第5章 好きなんだ
瑞希side
「あの……話って?」
裕斗君は正座をして僕の方を向いていた。
僕もつられて正座になる。
こんな裕斗君、珍しい……
「……すまなかった……」
裕斗君は僕に謝り土下座をした。
「ちょ、止めてください!そんな土下座なんて!」
「……俺、酔っててついあんな事……正直まだはっきり思い出さねぇんだ。ただ……少しずつ……思い出してきた。
ほんとにすまなかった。」
裕斗君はひたすら謝る。
確かにあの時はすごく怖かったし、痛かったし……
「……もう謝らないでください……僕もそんなに謝れると困ります。」
「……それから……さっきの収録で話した事……全部本当の事だ。……好きだって言ったのも……お前の事だ。」
……
やっぱり自意識過剰なんかじゃなかったぁぁぁ!!?
え……こういう時ってなんて言えばいいの?
僕が困惑していると
「だから……別に付き合ってほしいわけじゃない。ただ、仲直りがしたかった。好きだから……避けられたくない。お前の事は諦めてる。それに俺らはアイドルだし、同じグループだ。恋愛の関係になんてなれるわけねぇ。」
わかってる……
そんな事わかってる。
「僕だって……裕斗君とは仲直りしたいです。だから、もういいですよ。分かりましたから。」
裕斗君は一瞬驚いた顔をした。
「……そうか……ありがとう。」
『ありがとう』……
裕斗君に初めて言われた。
そして……
「お前に、本当の気持ちが伝えられて良かった。」
そう言って笑顔を見せた。
思わずドキッとしてしまう。
僕は自室に戻り頭をしっかり吹き直す。
さっきの裕斗君の笑顔は作られたものじゃなかった。
本当の笑顔……
僕はもう1度あの優しい笑顔を思い出す。
だめだ……やっぱりドキドキする。
これはもう勘違いなんかじゃない。
僕……
裕斗君が好きなんだ……