第1章 空虚感
デッキへ出ると空は快晴、気持ちの良い青空が広がっている
「どうかしたか?」
そう言って隣に立つのは戦闘員兼ローの右腕、船の航海士ペンギン
目元を覆うくらい深くPENGINと書かれた帽子を被っている
デッキの端で空を見上げるローに声をかけた
が、ローからの返事はない
ペンギンはフッと笑い言葉を続けた
「もう2、3時間もすれば島が見える。
ログは3日。今回の上陸は物資調達と情報収集をメインに考えているが情報収集は俺が引き受けよう。
あんたは少し休んだ方がいい。」
「おい…最後のは余計だ。」
ローはギロリとペンギンに視線を移す
「情報収集はシャチとベポにやらせる。
やるべき事が終われば後は好きに過ごせと伝えろ。」
「了解。」
(今日はやけに機嫌が悪いな…)
ペンギンは軽く頭を下げて船内にいるクルーの元へ向かった
一人空を見上げる
フワっと身体を包むような風が吹いた
「……」
埋まらない心
何不自由なく過ごせるほどの力はついた
それなのに何が足りない
ワンピースを求め、信頼出来る仲間と共に海へ出た
一歩ずつ確実に先へ進み、着々と地位も築き上げてきた
しかし、力を手にするたびに感じるこの空虚感
日に日に大きくなる心の隙間
一体自分には何が足りないのか…
「………チッ」
妙に苛立つ
しかし原因がわからないのだからやり場がない
そんなローを影からこっそり伺うのはシャチとベポだ
「さっきペンギンがもうすぐ島へ着くって言ってたよな…
なんかここ最近妙に苛立ってるみてぇだし
敵も雑魚ばっかでキャプテンきっと力が有り余ってんだな。
今日は島一番のいい店探して発散してもらおうぜ。」
「いい店って?」
「だから、女だよ!
おめぇにはわかんねぇだろうがな。
こんな時は女に癒してもらうに限んだよ。」
コソコソと話すシャチを
ーガンッ
「っいてぇ!!」
誰かが背後から殴った
「お前が行きたいだけだろうが。」
振り返るとそこにはいたのはペンギン
「馬鹿野郎!俺は船長にスッキリして頂こうとだなぁ!」
「お前と違って船長は女に困ってねぇんだよ。
探さなくてもあっちから寄って来るからな。」
「…はぁ。いいよなぁ船長…
俺なんて金積んでやっとなのによお。」
シャチは自分との格の違いにため息を零すと痛む頭をただただ摩った