第4章 最終章
「わ、すご」
壮馬くんは椅子に座ると目の前の料理に目を輝かせてそう言った。
「えへへ、頑張って作ったの」
さ、食べよ!と私も椅子に座った。
そして、2人で一緒に手を合わせて、
「いただきます」
そう言ってから目の前の料理を食べ始めた。
・・・・・・・・
食べ物を綺麗に平らげ、食後のケーキを食べ終えた時だった。
「…ね、ちょっと外出ない?」
壮馬くんが唐突に柔らかい笑みでそう言うものだから、不思議に思いながらも頷いた。
4月とはいえまだ少し肌寒いため薄手のカーディガンを着て家を出て2人で外を歩く。
「…どこに行くの?」
「んー、ないしょ」
時刻は7時ちょっと過ぎ。
辺りは真っ暗ではないが、やはり暗い。
不思議に思いながらも壮馬くんと他愛もない話をしながら目的地まで歩いた。
「ーここ」
そう言って足を止めた壮馬くん。
辺りを見渡すと、そこは桜並木のある、『あの日』の場所だった。
驚き、壮馬くんを見ると、優しい笑みを浮かべていた。
ふわり、と数枚の桜の花びらが私と壮馬くんの間を通り抜ける。
何故かはわからないけど、目を逸らせなかった。
桜と壮馬くんが絵になるからなのか、
優しい瞳の中に真剣さを感じたからなのか、
どちらなのかはわからなかった。
少しの間風の音だけになると、ようやく壮馬くんが口を開く。
綺麗な、私が好きな声で。
「…これを、探してますか?」
私と壮馬くんが初めて会った時の言葉を出して、あの時のように左手を差し出した。
フリだからなのか、手には何もなかったけれど。
なんだか懐かしくて、ふふ、と笑った。
「ありがとうございます」
あの時は言えなかった、出せなかった言葉を、今は言えるようになった。
ー今私がこうして笑えるのも、全て壮馬くんのおかげなんだ
そう思ったら目の前が滲んだ。
なんとか堪えてあの時のように見えないメモ帳を取り出すように左手を差し出した。
ーぎゅ、と少しだけ冷たい壮馬くんの手が私の手を軽く握った。