第6章 陽だまりの差す場所
昨日も図書館で過ごし、また今日も図書館へ足を運ぶ。
学校で見かけた時、何度声をかけようとした事か。
だけど知っているのは俺だけで、
彼女は何も知らない、何も知らないんだ。
虚しさが募るばかりで、心に隙間ができたようだった。
……切り替えて、本に集中しなきゃ。
あと残り数ページ。
これを読み終わったら、ありがとうと伝えよう。
何かきっかけを自分から作らなくちゃ。
待ってるだけじゃ何も変わらない事を俺は知ってる。
本の返却手続きを終えて、ふぅ、と小さく息を吐く。
あの陽だまりに彼女はいない。
ありがとうと、暗号を残して。
もしこれに気付かなければ、
この"意味"に気付かなければ、もうこの気持ちは忘れよう。
これからやらなきゃいけない事が沢山ある上に3年だ。
先の事を考えれば、この時期に好きな人と結ばれたとしてもう遅い
なんて気持ちが
結局他力本願な行動にしてしまったのかもしれない。
いつもは暖かいこの席に夕日が指すことがなくて
空気そのものが冷たく感じる。
何だかよく分からない気持ちが心の中でぐるぐると回っていた。