第6章 陽だまりの差す場所
『C36L-2』
俺と彼女を繋いでくれた大切な本だから。
この本からまた出会いたい。
なんて、らしくない事を願ってみたりして。
小さく書いた落書きに目を落とした。
彼女はこれに気が付いただろうか、
あの本を探してくれただろうか。
指定した今日がやって来て、彼女が来てくれたらもうそれだけで満足だ。
本の感想を伝えたい。
彼女のことを知りたい。
話したいことが溢れてくる。
「こんにちは」
彼女だ。
名前も知らない"彼女"。
澄んだ綺麗な声。
内容が入ってこなかった本に栞を挟み、
彼女に笑いかける。
お互い自己紹介をして、本の感想を話し合う。
同じ本を読んだはずなのに、違う視点から話すからまるで違う本だ。
気がつけば話すぎた位に時間はすぎていて、
彼女ともう少し話していたい衝動に駆られる。
素直に伝えれば彼女もまた話したいって。
嬉しくて思わず手なんか握って。
"また"がある事への安心がこんなにも心地よいものだなんて知らなかった。