第6章 陽だまりの差す場所
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初めて彼女を見た日。
俺以外にも使ってた人が居ることにびっくりしたけど
それよりも衝撃的なことはいっぱいで。
俺はそこに立ち尽くした。
陽だまりの中で本を読む彼女の姿は
一目惚れさせるには十分すぎるくらいだった。
時々紙を耳にかけたり、伏せられた長いまつげ。
不意に彼女が顔を上げる。
俺はびっくりして、本棚に身を隠す。
見惚れていた事、気付かれたかな…?
本を選ぶフリをして、静かに耳を傾ける。
すぐに彼女は席を立ち、本を持って出入口まで歩いていった。
安堵して、思わず溜息がこぼれる。
あの席を使う人がいたなんて。
しかもその子はとびっきりの美人で。
……制服、うちのと同じだったな。
これが一目惚れ。
これが恋。
まだ話した事すらない、知り合いでもない彼女に俺は
恋をしてしまったようだった。
「道宮、大変なんだなぁ……」
彼女の座っていた席に腰を下ろして、
どうすれば話せるかを考えた。
いきなり話しかけても不審だし、
何か機会があればいいが、特に接点も無さそうだ。
んー…と唸ったところでいい案も浮かばない。
諦めかけて、ため息をひとつ。
そして、ここが図書館だということを思い出す。
同じ本に手を伸ばす、なんてハードルの高いことはしなくても、
できそうな事がひとつ浮かんだ。
少しだけ頬を緩ませて、小さく机に落書きをした。