第6章 陽だまりの差す場所
それから私が数日経ってまた同じ席に着くと、
少しだけ期待して落書きを探す。
この前とは少しだけ離れた場所にそれはあった。
『ありがとうございます
読んでみます!』
丁寧なきれいな字で、それはあった。
その横にスマイルを添えて。
思わず頬が緩んだ。
返事が来たこともそうだが、
好きな物を読んでもらえたりするのが少しだけ嬉しかったのだ。
いい言葉見つからなかったので、取り敢えず
『いえいえ』
と少しだけ離れた場所に書き残す。
この人が面白い、と思える本だといいな、と思いつつ
もし面白いと思ったなら感想も聞きたい。
自分の周りに活字好きがいないのだ。
確かに漫画だと情景がわかり易かったりするけど、
私は小説の分かりにくさが大好きなのだ。
表現方法は作者によって違うし、こんな言葉を使うんだ、とか
数行の文字の羅列から自分でそれを想像するのが好きなのだ。
もしそれを人と共有することが出来れば…。
というのが、私のささやかな願いでもある。
さて、昨日読み残したページから
最後まで読み切ってしまおう、と思い本を開く。
ここにいると読みたい本がありすぎて
時間が少しでも惜しい。
今日もまたこの場所で、文字の海に浸り始めた。