第4章 カーテンコールのその先は
「それより黒尾さん」
「ん?」
「今日って何の日かわかります?」
頼んだチャーハンを口に含みながら私はクロに聞く。
クロは呆れたように笑った後、小さな紙袋を目の前に出した。
紙袋から小さな箱を空けて、中身を見る。
箱から出てきたのは真っ赤なガラス玉が埋め込まれた真っ白な箱。
「オルゴール……?」
「そ、聴いてみ」
ゼンマイをまいて、蓋を開ける。
綺麗な曲を奏でるソレに胸が躍る。
優しく柔らかい音色。
「クロ、ありがとう!!すっごい嬉しい」
「このさガラス玉見たらお前のこと思い出してさ」
クロも嬉しそうに笑う。
こんなおしゃれなモノをもらえるなんて思ってなかったからすごく嬉しくて……。
その時。
かしゃん。
何かが落ちる音がした。
人の声とは違う音。
その音に周りを見渡せば、食堂から離れる研磨の姿を見つけた。
それにクロも気が付いたのか。
入り口を二人で見つめる。
研磨と目が合うと、彼は逃げ出した。
何かを手に持って。
「研磨!」
走り出すクロ。
私もそれに続いた。
食堂を出ようとしたら、入り口に何かが落ちているのに気が付いた。
拾って確かめてみるとそれは説明書だった。
真っ赤なガラス玉が埋め込まれた真っ白な箱のオルゴール。
研磨は知らない。
研磨がくれる誕生日プレゼントは全部クロとかぶっている。
ぬいぐるみ、ネックレス、ピアス……。
デザインや色は違うけれど、同じなのだ。
それを大切にしまっている。
だけど知ってしまった。
クロとかぶっている誕生日プレゼント。
息ができなくなった。
さっき食べたものが逆流してきそうな、そんな感じがしたけど、奥歯を噛みしめて研磨を追いかけた。