第4章 カーテンコールのその先は
楽屋に戻って舞台メイクを落として通常のメイクをする。
真っ赤なルージュを唇につけて。
LINEを開くとクロから連絡があった。
食堂でご飯を食べているそう。
研磨と一緒に。
一気に気分が落ちる。
クロもクロで勘がいいから研磨が私のことどう思っているかなんてわかっているだろうに。
そして私が研磨に抱いている思いも。
昔はこんな気持ちを抱くことなんて想像もしていなかった。
ずっと幼馴染のままでいたかった。
食堂へ行くと、目立つ二人がそこにいる。
私はできるだけ笑顔を顔に張り付けて二人の所へ向かう。
声をかけようとした時、いきなり研磨が席を立った。
どこへ行くのかと聞けば「部室」とだけ答えて、そして食堂から姿を消した。
私はとりあえず、席についてお腹がすいていたから適当に注文をする。
その様子をずっと見ているクロを睨みつける。
「なに?」
「お前、演技下手くそだな」
「はっ!?」
聞き捨てならない。
わたしのどこが下手くそだと言うのだ。
「舞台じゃねえよ。研磨に対して」
「……ああ、そのこと」
「何か悩み事か。一応お前の彼氏なんだから隠し事はなしだぜ」
「………そんなこと言って本当はなんとなくわかっているくせに」
「まぁな。お前のことは隅々までわかっているつもりだ。もちろん、身体の方も」
「いい加減にしろ」
頭を軽く叩けばクロは静かに笑った。
それにつられて私も軽く笑う。
夢の中で研磨にキスをされたことは言わない。
言ったところでどうにもならないから。
それよりも今はこの瞬間を、この関係をこれ以上拗らせないようにすること。