第4章 カーテンコールのその先は
とても怖い。
本当の私を君に見せるのが。
そしてあの子の心の中を覗くのも。
私はずるい。
その日の夜、夢を見た。
舞台の上。
煌びやかな遺書を身に纏いセリフを吐き出す。
ああ、これは明日公演する舞台の内容だ。
だけど声は聞こえない。
音のない世界。
なのにどうしてだろう。
胸の鼓動が激しくうるさく鳴り響く。
私が叫んだあと、舞台上に設置されていた真っ赤なカーテンへと走り出す。
頭の中でハテナが浮かぶ。
本当はカーテンではなく袖幕へとはけるだけなのに。
夢の中の私はそれを全身を包み込んだ。
真っ赤なカーテンはまるで燃えるように熱く、苦しかった。
夢だからだろうか。
観客席で誰かが一人立ちあがるのがわかった。
上演中に立ちあがるのはマナー違反。
しかも舞台上に上がってきた。
舞台上に来るなんてありえない。
だけど誰も何も言わない。
ただ、固唾を呑んでその様子を伺っている。
ただ怖かった。
近づいてくる人物が誰なのか、わからなくて。
いや、その人との距離が近くなればなるほど、真っ赤なカーテンもどんどん熱くなっていくのが恐怖を私に植え付けた。
そして、隙間からその人を見た。
逆光のせいで誰なのかわからなくてもっと怖くなった。
そして、静かにゆっくりと真っ赤なカーテンは左右に開かれた。
光りの中。
私の目の前にいた人物に驚きを隠せなかった。
驚きで開いた唇に柔らかいものが触れた。
その夜、私は夢の中で
研磨にキスをされた。