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ハイキュー!! 秋祭りバトン!

第4章 カーテンコールのその先は





その姿を見て、俺は席を立った。
どこに行くんだと聞かれ「部室」と答えた。
急に思い出した。
彼女に渡す誕生日プレゼントを。

普段は滅多に走らないけれど、今日ばかりは違う。
廊下を走って部室から誕生日プレゼントが入った紙袋を持って、また戻った。

ひどく後悔した。

目の前には楽しそうに嬉しそうに話す二人の姿。
少し頬を赤らめて恥ずかしそうに笑うの姿。
彼女の手には、オルゴールがあった。
真っ赤なガラス玉が埋め込まれたそれ。
体の力が抜けて、紙袋が地面に落ちる。

かしゃん。

真っ白な頭の中で思った。
壊れてしまった、と。

落とした音に気づいたのか。
彼らはこちらに目を向ける。
それが嫌で怖くて恥ずかしくて。
落としたそれを持って逃げ出した。

まさかクロも同じものを買っているなんて思わなかった。
なんで、なんで、なんで。
いや、きっとこんな惨めな気持ちになるのはクロが俺と同じものを買ったからじゃない。
俺がオルゴールをあげても、彼女はきっとあんな顔はしない。
それが悔しかった。
「ありがとう」と言ってくれる言葉が嘘ではなくても、見せてくれる表情は違う。
俺とクロでは月とスッポンなんだって思い知ってしまった。
俺じゃあ、どうあがいてもクロには勝てない。
わかってしまって、自分の浅はかさが恥ずかしい。

部室に逃げ込んで、綺麗に包まれている包装紙を乱暴に破く。
中身はやはり壊れていた。
ゼンマイを巻いても、途切れ途切れにしか音は鳴らない。
せっかく綺麗な音色なのに、ちゃんと奏でることができない。

溢れ出しそうになる涙を必死に抑えて、俺はそれを持って外へ出た。
学校近くを流れている川の前。
軽く息を弾ませながら、俺はそれを放り投げた。

綺麗な音を奏でていたその箱は
綺麗な弧を描きながら空を舞い
捨てられて川の底へ消えた。
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