第4章 カーテンコールのその先は
明後日はあの子の誕生日。
そして文化祭。
文化祭の日に誕生日だなんて、慌ただしいし祝う時間もない。
だけど、今年は緊張しない。
そんな気がする。
毎年渡しているのにいつも緊張してしまうのだ。
。
俺の幼馴染。
好きな人。
そして、クロの彼女。
俺はクロの彼女を好きになった。
きっと好きになった早さで言えば俺の勝ち。
だけど想いを伝えた早さはクロの勝ち。
俺の方が彼女のことを想ってるだとか、
俺の方が早く彼女のことを好きになったとか、
そんな女々しいことは考えてないし、考えたとしても自業自得に過ぎない。
だから、何を想っても何をやってももう手遅れ。
「けーんま」
次の日。
移動教室のため、廊下を歩いていると後ろから抱きつかれた。
やめてほしい。
俺の気持ちなんて彼女にはわからないだろうけど、クロがいるのに。
そういうことされると、困る。
「クロに怒られるよ」
「そんくらいで怒りはしないよ」
巻きつかれた腕を優しく離して、彼女に向き直る。
真っ赤な唇が弧を描く。
あぁ、どうして俺は……。
「で、何か用?」
「用っていうか、明日の公演見にくるでしょ?」
「うん。出てるし」
「最前列より少し後ろがおすすめだよ!」
じゃね、と言って彼女は俺から離れて行く。
彼女は演劇部。
主人公ではないけど、おいしい役だとクロに言っていたのをクロから聞いた。
女優になりたいとか芸能系に進みたいとか、彼女の口から聞いたことはない。
だけど、舞台上で動く彼女は魅力的で眩しい。
そんな姿も好きでまともにみることができない。