第3章 流麗な夢をキミと
『ですが・・・』
「ほら・・・おいで?」
両手を広げてそっと抱きしめると、戸惑って涙で濡れた瞳が揺れる。
『・・・いけません、ご主人様・・・私は、ただの使用人でございます・・・』
「いいんだよ、オレがこうしたいんだから。それにお前はもう、ただの使用人なんかじゃない・・・オレの、一部なんだから・・・」
『ご主人様・・・』
「・・・」
大屋敷の主と、使用人の禁断の恋・・・とか・・・
ヤバいな・・・
そういう設定って・・・妙に萌える。
女子っていつも、こんな妄想とかしてんのか・・・
そういうのも、たまには悪くないかもな?
澤「・・・ガ。おいスガ?」
肩を揺すられ、現実に引き戻される。
もう少し、甘美な夢を見たかったな。
口端で笑い、小さく息を吐く。
澤「急にぼんやりして、どうした?」
「ん~・・・別に?ちょっと、ね」
あんな妄想してました・・・なんて、言えるわけないだろ。
旭「スガは最初からずっと動きっぱなしだったから疲れたんじゃないのか?」
「あはは、そうかもなぁ」
月「・・・妄想が暴走」
「う、うるさいよ月島」
オレそんなに顔に出てたのか?!
危ない・・・気をつけないと。
飲み頃を通り過ぎた紅茶に口を付け、その甘さに疲れを溶かしながら目を閉じた。
澤「さてと。そろそろ閉会式の時間になるな。部の代表者は必ず出る様にって言われてるから行くか、スガ」
「え?オレも?」
澤「当たり前だろ?副主将なんだから」
もうちょっとだけ・・・余韻に浸りたかったのに。
「そうだ、オレ達最後の文化祭だから3年全員で行かない?清水も一緒に4人でさ!」
清「私も?」
旭「それいいな、大地」
澤「と、言うことで清水?4人で行くぞ?」
有無を言わせない笑顔を大地が放ち、渋々といった感じで清水も同意した。
澤「じゃ、俺達は閉会式出て来るから戻るまではゆっくりしてていいから。片付けは後でやろう」
「「 っス! 」」
「あ、ねぇちゃん?折角だからさ、オレ達にアレ、やってくんない?」
奥にいるちゃんに声をかけると、フッと穏やかに笑って姿を表してくれた。
『行ってらっしゃいませ、ご主人様』
「・・・うむ、行ってくる」
やっぱり、こういうのいいかも!と軽く胸を弾ませ閉会式へと向かった。