第3章 流麗な夢をキミと
『それでは・・・お飲み物をご用意致します、ご主人様』
清「ご主人様、どうぞこちらへおかけになって下さい」
「「 えっ?! 」」
突然そう言われ、オレ達はみんな驚きの声を上げた。
『さ、ご主人様?どうぞこちらへ』
ちゃんと清水が、ひとりずつオレ達を席に案内する。
どういう事だろうとオレは大地と首を傾げなからも、勧められるままに席についた。
全員が席に収まると、今度はふたりがオレ達がさっきまでしていた様に丁寧におもてなしをしてくれた。
『ご主人様?お砂糖はお入れしますか?』
清「ご主人様、カップが熱くなっております。お気をつけ下さいませ」
ひとりひとりに声をかけながら、紅茶とクッキーを配って行く。
山「なんか、緊張する・・・」
「山口はずっと緊張してたじゃないか・・・」
旭「される側に回ると、なんか落ち着かないなぁ・・・」
澤「貫禄だけはご主人様なのにな、旭は」
「それは大地もだからね」
「「 確かに・・・ 」」
澤「お前らなぁ・・・」
たわいもない会話を聞きながら、メイドのふたりが口元を緩ませていた。
『それではご主人様、今ひとときをごゆっくりお過ごし下さいませ』
清「御用の際はお呼びくださいませ」
軽くお辞儀をしたふたりが、物音を立てずに奥に下がってしまう。
ご主人様かぁ・・・
男がそんなことを言われたら、確かに非日常的で・・・いろんな事を想像しちゃうよな。
例えば、オレが本物のご主人様だったら・・・とか。
そして、あのふたりはやっぱりメイドでさ。
清水は厳しくメイドを教育指導してるメイド頭
をしていて、ちゃんはその清水の下で指示を受けながら毎日忙しく働いている。
一生懸命なんだけど、ちょっとドジっ子で、清水にいつも怒られたりして。
失敗しても、怒られても、めげずに笑顔を絶やさず仕事をするちゃんは、お屋敷のみんなから愛されている。
いつしかオレは、そんなちゃんでいっぱいになって行って。
「、また清水に叱られたのかい?」
『ご主人様・・・いいんです。私がいけないんです・・・』
「今日は何を叱られたんだ?」
『・・・カップをひとつ、落としてしまいまって』
「ふふっ、そんな事か。形あるものは、いつか壊れてしまうんだから、泣くなよ」