第3章 流麗な夢をキミと
合図に気付いた西谷が、さり気なく山口の隣に立つ。
これで少しは安心だ・・・と、いいな。
「お嬢様、こちらへお座り下さい」
道「あれ?西谷君・・・今日はいつもと雰囲気違うね。でも、その髪型も新鮮でいいね!」
そうそう。
オレ達は合宿とかで見慣れてるけど、他の人から見たら今日の西谷は別人の様だからね。
西「かた、かたじけない・・・」
・・・武士か!!
山「プッ・・・ククッ・・・」
山口!お前も笑うな!
「お嬢様、大変失礼致しました。ただ今お飲み物をご用意致します」
いろいろ言いたい事はあるけど、今それを言葉には出来ない。
オレは冷静を装ってその場を離れちゃんに接客セットを準備して貰うと、ベルを鳴らし山口を呼び、会話が聞こえないように端に寄った。
「山口、緊張してんのはオレも同じだよ。だから、もっと力抜けって・・・な?」
山「ははは、はい!力抜きます!」
いや、全然抜けてないって。
「お客は全部、お前の好きな人だと思っていれば自然な笑顔も出来るだろ?頑張れよ」
オレがそう言うと、山口は一瞬チラリと視線を動かし笑顔になった。
山「オレの・・・好きな・・・?菅原さん、分かりました!オレ頑張れます!」
ポンポンっと肩を叩き、山口を送り出す。
緊張しても、とりあえず笑顔を崩さなきゃ大丈夫だろ。
笑顔・・・?
そういや山口、なんで一瞬・・・ちゃんの方を見たんだ?
オレが気付かないだけで、メイドに呼ばれてたとか?
まぁ、よく分からないから・・・仕事に集中しよう。
それから後は、執事カフェを後にした女子達の感想が広がり・・・幸か不幸か常に満席状態になっていた。
オレも交代の時間になると、大地や旭と代わって入口に立ち、来客や帰って行く人の見送りを忙しなく行っていた。
『どんなに忙しくても、この空間だけはそれを感じさせたらダメですからね?』
始まる前にちゃんが言っていた事を守り、出来るだけ仕草や言葉遣いを意識して対応する・・・
けど!
なんて言っても、何より恥ずかしいのは・・・
ここから先の事なんだよ。
オレに取っては、テーブルについてお世話するより難関だと言っても過言ではないくらい。
それというのも・・・