第3章 流麗な夢をキミと
ひと呼吸して、準備は出来てる・・・と、大地に目配せをする。
大地はそれを見て、振り分けられた教室のドアを・・・ゆっくりと開けて行った。
澤「・・・お待たせ致しました、お嬢様」
緊張した面持ちで大地が言えば、小さくきゃぁぁっと黄色い声が上がる。
1年生、かな?
ちょっとオロオロしながらも、3人でほんのり顔を赤くして入って来た。
「お帰りなさいませ、お嬢様。お席にご案内致します。どうぞ、こちらへ」
ー あ、は、はい! ー
3人だから、上手く立ち回れそうな縁下の所に案内するか。
そこに連れていくぞ?と顔を向ければ、縁下も了解ですと小さく頷く。
縁「お帰りなさいませ、お嬢様。こちらにおかけ下さい」
オレと、隣のテーブル席にいた西谷が手伝い、縁下と同時に音を立てずにスっと椅子を引く。
・・・これも、相当練習したよなぁ。
『音を立てずにスマートに!』
そこまで?!とか思ったけど、ちゃんと練習しといて良かったって思うよ。
上手くできた事に口端を緩ませる西谷と目線を合わせ、お互いホッとする。
それに、今日の西谷はいつもと雰囲気が違う。
ツンツンに立てている髪を下ろし、ちゃんと清水から軽くヘアメイクを施されている。
それは他のメンバーもだけど、そういう所から普段の男子バレー部とは違う空気がこの部屋いっぱいに漂っている。
・・・ここは、夢を提供する場所。
何よりもそれを忘れないでって言うちゃんの言葉が背筋を伸ばす。
縁下と西谷を残して、オレは飲み物とお菓子を用意して貰う為にちゃん達の所へ足を向けた。
「3名のお嬢様でございます」
『かしこまりました。ご用意致します』
ふたりが手際良く紅茶とお菓子を用意する。
片付けや運搬の都合でちゃんとしたティーカップが使えないからって、でもせめて持ち手がある紙カップにしようとアチコチ店を回って買い集めた。
でも、そのまま使うのは味気ない・・・そう言っていたちゃんが、いま持ち手に小さなリボンを結び付けた。
お菓子だって市販のでも充分なのに、夢がない!ってひと言でふたりで作ったって言ってた。
清水は昨日、ちゃんの家に泊まり込みだったみたいだし。
そんなふたりの力作で、少しでも夢の時間を提供する。
それがオレ達の役目だ。