第2章 My cream puff prince
花「ちゃん、お疲れー」
「花巻さん、お疲れ様です」
廊下から、スクバを持った花巻さんが現れる。
花「ホント、俺ら不運だよな。文化祭の実行委員なんてよ」
「はい。うちのクラスはくじ引きだったから、
自分の右手が恨めしい…」
ドンマイ、と笑いながら返してくれる。
花「そーだな。しかも俺の補佐もしなきゃダメだからな」
しっかりやってくれよ?なんて言うのは、花巻さんらしい。
なぜそうなったのかと言うと、花巻さんが委員長に推薦され、
何故か指名されて副委員を担当することになったのだ。
そこまで面識がなかったものだから、なぜ指名されたのか未だに謎だ。
2人で今日の話し合いの内容を消してから
花「あ、今予算表出せる?
確認したいことがあって」
はい、と渡すとんー、と少し考えるような格好をとる。
「どうかしました?」
花「3-6の女子に、予算もっとよこせって言われてさ。
確かに最後だから3年の俺らだけでも予算増やしてーなって。
俺がなったからには出来ること全部やってやる」
ニヤっとは笑う先輩に少しだけドキッとしたりして。
「花巻さん面倒くさがり屋なのに、
わざわざ面倒くさくしていいんですか?」
花「ちゃんに任せる。俺は指示出すけど、働かないから」
よろしくな、なんて。
花「私だって働きたくないですよ。
今年の先輩の働きに来年あやかりたいんで」
花「ちゃんと今年は働く気あるじゃん」
そこはしょうがない。
今年副委員に選ばれてしまったからには
来年委員長コースだ。
「仕方無く、ですよ。
なんで私なんか推薦したんですか」
ちょっとだけ冷たく言ってみる。
花「なんつーか、この子とやったら楽しそうだなって」
返ってきた答えは選択肢の中には無かったもので。
予想外の展開が来て反応がワンテンポ遅れる。
「花巻さんぽくない答え」
花「そんなに柄じゃないか」
ケタケタと笑う花巻さんの笑顔は眩しい。
「おーい、下校時間だぞ。早く帰れー」
ドアが急に開いて、ビクリと肩を揺らす。
花「あ、スイマセーン。
早く帰りまーす」
間延びした声で返事をして。
花「途中まで一緒に帰んべ。行くぞ?」
電気を消した教室じゃよく顔が見えなかった。